あれは高校の美術の時間だった。
課題で油絵を描くことになって、僕は自分が撮った写真を見ながら夕焼けの街を描いていた。
しかし、どう描いてもどこか違う。
何か「夕焼け」にならない。
腕組みをして考えていると、先生が「どうした?」と聞いてくれたので、カクカクシカジカと話してみた。
すると先生が言った。
「お前は見てないんだよ。」
?
意味が分からなくて呆けていると、先生は手に写真を持って言った。
「お前、夕焼けの緑が見えてないんだって。」
みどり?
夕焼けに緑色?
先生何言ってんだ、夕焼けに緑とかあるわけn、、、
緑があった。
夕日のオレンジと夕闇のブルーを繋ぐ部分に、緑があった。
半信半疑で緑の部分を描き足すと、
絵は 唐突に夕焼けになった。
この時の衝撃をずっと覚えている。
あれから何年も何年も経ったけれど、今でも夕焼けを見ると緑を探す。
緑を探して、それがちゃんと見えると
「よし、 見えている。」
と納得して安心する。
でも多分、まだまだ見えてない色やモノは沢山あるんだろうね。
あの時みたいな衝撃を、出来ることならまた味わってみたいと思うのでした。