さて、まずは数学と算数について書いてみようと思います。
ご存知のように、算数は小学校までで終わり。中学からは算数は数学に替わります。
【算数と数学】
世間には様々な定義があるのでしょうが、私個人としては
・算数=意味のある数字の取り扱い方、
及び数字が持っている意味の読み取り方を扱う学問
・数学=意味を除いた純粋な数字の論理的性質を研究する学問
のように考えています。
このように捉えた場合、実生活に於いて
・例えばニュースに出てくる各種の数字を見る場合
・様々な統計の数字やグラフを読み解く場合
というような場面で、
より重要になるのは数学ではなく算数である
と思いませんか?
この観点から考えると、算数は小学校で終わるべきものではなく、義務教育の範疇である中学校まで発展させるべきものと思います。
言ってみれば「高等算数」ですね。
実世界にあふれる数字の意味を考え、違う視点で考えた場合の数字のあり方を模索する。それはかなり高度な思考が必要とされることです。
実世界の数字には意味があります。
よく「数字は嘘をつかない」と言いますが、
嘘つきは数字を使います。
それは数字の意味を誤認させることから始まります。
数字の意味を読み解き「理解すること」。
それは方程式を「覚えること」より難易度の高いことです。
そして意味の理解には
「文脈の理解=読解力」が必要になります。
つまりそれは文系の力。
「 理系>文系(理系は文系より上位)」
のように考えている方がいらっしゃいます。
そのような方は文系の力を軽んじるので
文系の力が欠落した理系
という状態に成りがちです。
そのような方々は「技術者」と呼ばれる方々に少なからず散見されます。
そのような方々を見分けるのはとても簡単です。
「話が通じない」「会話が成立しない」からです。
そのような方々は、この状況を「相手のレベルが低いからだ」と考えます。
でも実は
「相手の話を聞いて、その意味/意図を理解する能力」や
「相手に合わせて概念を分かりやすく説明する能力」
が欠落しています。
しかし自分の側が欠落しているなどとは微塵も考えないので、理解の溝は永遠に埋まりません。
例えば職場でシステム開発の案件があった場合、開発会社のエンジニアと打ち合わせをする機会があるかと思いますが、
・話が通じないわー
・そういうことを言ってるんじゃないんだよ
・こっちの話、聞いてるか?
等と感じたことはありませんか?
その状態のことです。
誤解しないで頂きたいのですが
理系の能力は大事です。
ただ前提条件として文系の能力が必要だ、という話をしています。
しかしそれは
テスト勉強で文系科目でも点数が取れていた
というような幼稚な話ではありません。
例えばテスト勉強に出てくる国語文章題は、
問題文の中に
「『正解』を特定するための要素」
が必ず含まれています。
だからこそ「これが正解だ」と言えるわけです。
そのような「用意された要素によって論理的に特定可能な『解』」を求める技術は、実は数学的な技術と類似したものに過ぎません。
しかし実世界にある文脈には、
「『正解』を特定するための要素」
が含まれているとは限りません。
むしろ
「正解など無い」
というケースの方が多いでしょう。
さらに言えば、
そもそも何を「問い」とするのか
というところから話は始まります。
誰も「これが問題文だよ」とは定義してくれません。
優しく丁寧に正解を用意してくれているテスト問題とは違うのです。
そのような状況下では、
・何を「問題点」と捉えるか
・「解」は存在するのか
・「解」は必要なのか
・必要ならば何をどのように「解」とするか
等々を「対象の物事の意味から導き出す力」が必要になります。
そしてそれは紛れもなく文系の力です。
昨今、テストの問題文の意味が理解できない生徒が増えていると聞きます。
おそらくテスト勉強の背景にある
「 理系>文系(理系は文系より上位)」
という馬鹿げた価値観が原因の一つなのだろうと思います。
子どもたちが意味を理解出来ていない数字で踊らされないように
TVのニュースで報道される数字やグラフを、その意味を理解もせずに信じないように
理系と文系の能力は、相互に助け合う性質のものです。
・文系など理系より下位なのだ
・理系の方が文系より優れているのだ
そんな愚鈍な思考に引きずられないようにしましょうね。