※すみません、今回ちょっと長文です。
写真を撮る方(含むプロ・アマ)の中には、
撮った後の処理、例えば
・トリミング(撮った写真の部分的な切り抜き)
・RAW現像(カメラのRAWデータを用いた明度彩度etcの編集作業)
・レタッチ(狭義には「写真のマズかった部分の修正」。
広義には、RAWデータ以外の撮影画像の編集作業。)
等を忌み嫌う方がおられます。
ひどい場合には「邪道だ」と罵倒されたりする方までおられます。
で、そういう方は
「勝負は撮る時につけるものなんだよ」
的なことを仰る。
まぁ撮る時に真剣である必要はあると思うのですが、
ちょっと冷静に考えてみましょう。
写真の完成までに決めるべきことは沢山ありますよね。
・アングル(どの角度から撮るか)
・距離(どれくらいの距離から撮るか)
・フレーミング(いわゆる「構図」をどうするか)
・どのレンズを使うか
・どのカメラを使うか
・被写界深度(焦点距離や絞り)をどうするか
・ブレ(シャッター速度)をどうするか
・色温度(ホワイトバランス設定)をどうするか
・明るさ(明るめにするか暗めにするか)
・その他フィルターやら何やらあれこれ
ですが実際に撮る時、それらを全て考慮する余裕ってありますか?
・人や動物なら動いちゃいます
・風景だって光の色や明るさや雲の加減はあっという間に変わります
・スナップ等なら「あっ」と思った瞬間に
とにかく撮らないと話になりません
先に挙げた「◯◯をどうするか」を全て解決する余裕は
なかなか持てないものです。
スタジオ撮影なら、ほぼ全てを自分でコントロール出来ますから、
撮る時に全て解決することも出来るかもしれません。
しかし、いつもスタジオで撮るわけではありません。
では、やり残した「◯◯をどうするか」は、どうしますか?
「だって仕方がない」で諦めますか?
自分のせいじゃないから関係ないとか?
フィルム写真の場合。
特にカラー写真では、撮った後で自分で出来ることは
とても少ないものです。
・撮るでしょ
・写真やさんにフィルム渡して現像してもらうでしょ
・で、プリントも写真やさんに頼むでしょ
・そこで頼めるのって
-明るめ暗め
-濃いめ薄め
-大雑把なトリミング範囲の指定
くらい(一切やってくれない写真屋さんも多い)。
まして、ハイライトやシャドーの調整だの細かな色味の調整だのとかは限られたプロラボに頼むしかなくてとっても高価。
ぶっちゃけ撮影者に出来ることは、実質的に
「撮る」だけ
なわけです。
なのでフィルム写真(特にカラー)の撮影に際しては
「勝負は撮る時」
だと思います。
しかしデジタルの場合は違います。
撮影者が自分で出来ることがフィルムより遥かに多い。
撮った写真はその場で見れますし、撮る時にファインダーや背面パネルで明るさや色の目安もつけられる。
アドビのLightroomをはじめとするRAW現像を含む編集ソフトは多くありますし、今どきならスマホでもかなりのことが出来ます。
デジタル写真なら、撮った後に出来ることが沢山ある。
でもそれらをやると「邪道だ」と責める人が出てくる。
フィルム写真は「薬品の反応」で画像を作る化学の世界で、
デジタル写真は「データ」で画像を作るコンピュータの世界です。
両者は、材料も原理も全く違う「異なるもの」です。
デジタルが全ての点でフィルムを凌駕しているとは思いません。
なぜなら両者は「異なるもの」であって、「どちらが優れているか」というものではないからです。
しかし
「デジタルの方が、
撮る時/撮った後に出来ることが
圧倒的に多い」
というのは間違いないことです。
ですから、
フィルム写真の方法論で
より多くの方法を持つデジタル写真を縛るのは
間違いだと思います。
フィルム写真の基本的な完成形は印画紙に現像された写真です。
デジタル写真の基本的な完成形はディスプレイの画像です。
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いわゆる「プリント」について。
印画紙への現像ではなく紙への印刷については、
フィルムから紙への印刷も
デジタルデータから紙への印刷も
どちらも「印刷技術」の世界の話です。
RGBの世界ではなくCYMKの世界の話です。
「基本的な完成形」ではなく「応用」の領域だと思いますから、
ここの話で扱う「写真」とは別枠と考えます。
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とりあえず、デジタル写真において
RAW現像やレタッチを「邪道」扱いするのはやめませんか?
当たり前のことですが
デジタル写真はフィルム写真ではないんです。
先日も書きましたが、
それが何であれ、
良いなと思ったものを好きな感じに撮ればいい
と思っています。
・撮る時にやりたかったこと
・でも出来なかったこと、やり残したこと
・パソコンやスマホがあれば、自分で出来ること
パソコンやデジタルデータの扱い方を勉強して
あれこれ試行錯誤して
自分が撮りたかった映像に近づけていく行為。
それが邪道ですか?
僕は違うと思います。